仏手柑と降魔手

奈良の唐招提寺は、日本仏教や正倉院薬物とも関係が深く、中医学を学ぶ私にとっては『鑑真』ゆかりのお寺としてとても興味深いお寺です。今回偶然、金堂平成大修理落慶法要が行われていた唐招提寺に伺い講堂に安置されている『弥勒如来像』などを拝見していて、新発見が二つありました。

一つは、弥勒如来の左手が、下を向いていたこと。日本でよく見る仏像の手は、手のひらが上を向いている像が多いのですが、唐招提寺の弥勒如来は、手が下を向いています。お寺の方のお話だと、これは降魔(ごうま)手といって、悪魔を退ける身振り(釈迦が悟りを開いたあと悪魔が悟りの邪魔をしにやってきた際に、釈迦が指先を地面に触れると地神が現れて釈迦の悟りを証明しこれを見た悪魔が退散したという話からそのときの釈迦をとらえたもの)だそうです。

もう一つは、弥勒如来の前に供えられていた供物です。仏手柑(ぶっしゅかん)が供えられていたのです。日本で仏手柑が供えられているのは初めて見ましたので、お寺の方に伺うと、「普通の人で、仏手柑に気づく人はいませんよ」とのことでした。家元などが何かのイベントの時、供える事があるそうです。和歌山で作られた仏手柑だそうです。ちょうど柑橘系の果物が出回る時期ですから、この唐招提寺でも、金堂平成大修理落慶法要に合わせて供えられたのでしょうか。

さて、仏手柑とは何でしょうか。ちょうど今年、香港の花屋さんで植木鉢に植えられた仏手柑を撮ってありましたので、ご覧ください。人の手のような形をした柑橘類です。仏様の手のようだということでしょうか。この仏手柑は、生薬としても使われます。

仏手柑 ミカン科のブッシュカンの成熟果皮

行気薬(気の巡りを調整する)

性味 辛・苦・酸/温
帰経 肝・脾・胃・肺
効能 良い香りがして、胸脇の張った痛みや、食欲不振などを改善します。

ナナの房の様な植物が、仏手柑です。写真をクリックすると拡大できます。沈香といい、仏手柑といい、行気薬に分類される生薬として使われるものと、仏様と関連がありますね。